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昔、あるところにお館様という大男と佐助という中くらいの男と弁丸という小さな男の子が住んでいました。 ある晴れた日の朝のことです。 「ほら、いい加減起きなさい。朝飯できてるよ。」 食事の支度はなぜか佐助の仕事です。 食卓へついたお館様は、起きてきた弁丸に言いました。 「弁丸にはまだ味噌汁が熱すぎるであろう。どうだ、朝飯の前に一汗かくとしようではないか。」 「さすがはお館様!それはよろしゅうございますな!」 「ちょっとちょっと、いくらなんでも朝飯冷めるって」 佐助は抗議しましたが、2人の耳には届きません。いつものことです。 庭へ出て行く2人を追って、佐助も部屋を出て行きました。
3人がいなくなった後、部屋にそろそろと入ってきた女の子がいました。 「・・・ごめんくださいだべ」 三つ編を揺らしながらきょろきょろしているのは、北の方からやってきたいつきでした。 飢饉で苦しむ村人を見かねて、 「ようし、おらが寒さや日照りにも強い種類の稲を探してくるだ!」 と宣言してばさら界をあちこち旅していたのです。 「誰もいないだか・・・?」 見ると食卓には美味しそうな朝食が並んでいます。 いつきはここしばらくろくな食事にありついていませんでした。 「ちょっと・・・いただくだ・・・」 いつきははじめにお館様のお椀を味見しましたが、それはちょっと熱すぎました。 次に佐助のお椀を味見しましたが、今度はちょっとぬるすぎました。 最後に弁丸のお椀を味見したら、これはちょうどいい温度でした。 食べてみるとそれはそれは美味しくて、いつきはつい弁丸の分の朝食をすっかり平らげてしまいました。 「ああうまかった。おら、こんな美味しいご飯は初めて食べただよ。」 お腹がいっぱいになったら元気がでました。 ついあちこち覗きたくなります。 隣の部屋には変わったものがおいてありました。 巨大なうちわと、銀色の円盤と、可愛らしい槍です。 いつきはまずうちわを手に取りました。 でもそれは重すぎて持ち上がりません。 「何につかうんだべか・・・」 次に円盤を手に取りました。 でも使い方が分かりません。 「さすけって書いてあるだ・・・」 次に槍を手に取りました。 これならいつきにも持てる大きさでした。 「へー、かっこいい。」 面白がって振り回していると、うっかり障子を破いてしまいました。 「あちゃー」 そこで今度は庭先に出て振り回してみました。 ところが張り切りすぎて庭石にぶつけ、槍を折ってしまいました。 「・・・悪いことしたべ」 お腹が一杯になってすこし運動したためか、なんだか眠くなってしまいました。 さらに奥へ行くと、布団が置いてあります。 大きい布団、小さい布団、そしてなぜか部屋のすみの方に中くらいの布団がありました。 いつきはまず大きい布団に寝てみました。 でもこれは枕が硬すぎました。 「ごつごつだべ・・・」 次に中くらいの布団に寝てみました。 でもこれは薄すぎました。 「風邪ひいてしまうだよ・・・」 最後に小さい布団に寝てみました。 今度は大きさといい、柔らかさといい、ぴったりでした。 「はー、気持ちいい・・・」 いつきはあっという間に眠りに落ちました。
さて、 鍛錬を終え、生き生きとしたお館様と弁丸、そして無理やり付き合わされてげっそりした佐助が戻ってきました。食事にしようと席につくと 「おや、誰かがわしの椀のものを食したようじゃ」 「あれ?俺様のお椀、誰か手つけた?」 「某の食事がないでござる!」
さらに隣の部屋に行くと 「おや、わしのうちわが少し動いたようだ。」 「ちょっとちょっと俺様の武器がこんなところに落ちてるよ。っていうか、あの障子どうしたの!?」 「某の槍が・・・!お館様にいただいた某の槍が!」
これは誰かが来たに違いない、と3人が奥に行ってみると 「・・・わしの枕がへこんでおる。」 「あれー?俺様の布団が広げっぱなしー。」 「某の布団に誰かが寝ているでござる!」 3人が覗き込むと、弁丸の布団にかわいい女の子が寝ています。 「は、は、破廉恥でござるうううううう!」 ただならぬ叫び声にいつきが目を覚ましてみれば、3人の男が自分の顔を覗き込んでいます。 1人は真っ赤な顔をしていますし、1人は見たこともないような色の髪をして、顔に色をつけていますし、 1人は天井にとどくような大男で、もふもふした頭には角を生やしています。 いつきはびっくりして飛び起きると、縁側から逃げていってしまいました。 「なんだったのでござろう・・・。」 「旦那がおどかすからでしょー?」 「まあ、たいした被害があったわけではないしな。佐助、弁丸の槍と障子を直しておくのだぞ。」
「なんで、俺様!?」 拍手・メッセージともありがとうございます!励みにさせていただきます!